質の高い教育と公平性に焦点を当て、豊富なミクロレベルの分析データを用いて就学パターンを分析。
本書は子どもたちが就学後、留年や中途退学などのプロセスを経て、卒業あるいは退学に至るまでの実態を修学のパターンとして捉え明らかにした、アジア、ラテンアメリカ、アフリカの3地域12カ国を対象にしたケーススタディをまとめたものである。正コーホート法により収集した縦断的なデータベースでは、横断的データ分析では通常見逃されてしまうような、平均値に現れない個々のこどもたちの特異な実態を明らかにし、提示している。また、半構造化インタビューにより個人レベルでのデータの裏付けを取ることで量的分析と質的分析を組み合わせた混合研究デザインを実現している。個々の子どもたちに焦点を当てた分析から得られた知見は、国連の持続可能な開発目標4(SDG4)「質の高い教育をみんなに」の2030年までの達成に向けて、貴重かつ斬新な示唆を与えてくれるものである。本書は、比較教育学、国際教育開発、国際協力を専門とする政策立案者、実務者、研究者および大学院生にぜひ一読いただきたい研究成果である。
神戸大学大学院国際協力研究科?教授 小川啓一