本書は、「万人のための教育(Education for All: EFA)」や「ミレニアム開発目標(MDGs)」のもと、途上国における基礎教育の普及と国際教育協力の課題を多角的に検討した一冊です。基礎教育は、すべての人々に保障されるべき基本的人権ですが、人口増加や貧困、教育へのアクセス格差など、途上国が直面する問題は依然として深刻です。ユネスコ、国連機関、世界銀行をはじめとする国際社会が果たしてきた役割とともに、90年代以降の教育政策の展開や成果を検証しつつ、具体的な課題を掘り下げています。識字教育の進展や、ジェンダー不平等、都市と農村間の格差など、地域ごとの多様な教育状況を分析し、EFA目標の達成に向けた実態と限界を明らかにしました。
さらに、教育を取り巻く社会問題(貧困、HIV/エイズ、紛争など)にも焦点を当て、教育開発が果たすべき役割と今後の展望を提示。政府、国際機関、NGO、地域社会が協力し合いながら、どのように持続可能な教育システムを構築できるのか、その道筋を探ります。
本書は、国際教育開発の現場に携わる研究者、政策立案者、実務者にとって貴重な知見を提供するとともに、教育協力の新たな方向性を考えるための必読書です。基礎教育の普及を通じて持続可能な未来を築くための課題と可能性を、豊富な事例とともに示した一冊です。
神戸大学大学院国際協力研究科?教授 小川啓一