演劇や音楽は作品の上演自体が記録として「残らない」ため、その実態を知る手がかりは限られる。古代ギリシア劇の復興を目的に16世紀末のフィレンツェで誕生し、こんにちなお世界各地で上演されているオペラもその一つだ。その誕生から、いつ?どこで?どのような形態で上演されてきたのか?オペラ上演は劇場という場で、台本作家、作曲家、興行師、演出家、指揮者、美術家、演奏者、ダンサー、技術者等の大人数が関わる一大イベントだ——上演形態やその内容、頻度を決定づける諸条件や要素は無数にあるだろう。本書は主に劇場の上演記録を用いながら、17?20世紀のヨーロッパ音楽劇のいくつかのケースについて、上演傾向とその変遷を探る試みである。
国際文化学研究科?岡本佳子